2012年03月12日

トゥグルク朝スルタンの性格について言及

gold.jpgイブン・バットゥータがトゥグルク朝インドを訪れたときは、第2代スルタンムハンマド=ビン=トゥグルク(wikipedia)の治世でした。彼の苛烈な性格を知ることができる記述があります。

写真はムハンマド=ビン=トゥグルク治世下の金貨。

『大旅行記5』48頁〜
この王は、人に恵み与えることを誰よりも好まれ、ときにまた他人の血を流すことを最もお好みになっていた。したがって、彼の門前からは、金品を恵まれた乞食たちの列が絶えず、ときにまた、生ける命を絶たれた者たちの死体が絶えなかった。

彼に対する人々の数ある世評として、寛大で勇敢であるかと思えば、また極悪人たちの持つ残虐さと凶暴さが評判となった。

それはともかくとして、彼こそは人々のなかで最も厳しくおのれ自身をへりくだり、また最も多くの公正な態度と正しい処罰をもってことに臨む御方である。そして、イスラム信仰に関する諸々の儀式・行事は彼のもとで忠実に遵守された。実際に彼は日々の礼拝にきわめて厳格で、その務めを怠ることに罰を科した。彼こそは、好運の星、必ずや巡り来たりて、命じたること、必ずや良き結果を生みて、常人の成果を遥かに凌駕する昔日の大君主たちのなかのひとりに数えられる。

●解説
ムハンマド=ビン=トゥグルクは軍人として苛烈な性格で、版図を広げることに成功した一方で、気に入らない人間はすぐに処刑したり、通貨危機を招いたりと失政も数多く行いました。その結果、各地で反乱が起こるはめになります。

彼の性格についてイブン・バットゥータは「伝聞ではなく、実際に会って感じたことを書いている」と述べています。そう、実は彼はムハンマド=ビン=トゥグルクに謁見し、側近として仕事までしているのです。その性格描写は、同時代の史料を根拠に調査してみても正確と言われていますが、それも当然と言えます。


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ラベル:イスラム教
posted by すぱあく at 01:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 『大旅行記』レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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