フランス革命のときもそうでした。革命の波及を恐れた各国は、1792年フランス革命政府(ジロンド派内閣)に対し、次々に宣戦布告します(フランス革命戦争)。スペインもこれに参戦しますが、フランス軍にこてんぱんにやられてイッ気に弱体化します。
その後、フランスではナポレオンが台頭し、全ヨーロッパを巻き込む戦いを展開します。ナポレオンは弱体化したスペインを手中におさめるため、兄のジョゼフ・ボナパルトをホセ1世としてスペイン王に即位させます。
これには民衆が猛反発し、1808年3月にマドリードで反乱を起こします。これがスペイン全土へ広がり、いわゆる
スペイン独立戦争(半島戦争)に突入します。

侵略してきたフランス軍に対し、スペイン・イギリス・ポルトガルが連合で対抗します。とくにスペインはゲリラ戦を展開して抵抗します。そのうち、ナポレオンはロシア遠征の大失敗なども重なり、撤退を余儀なくされます。ホセ1世も亡命し、ボルボン家のフェルナンド7世が復位します。
なんとかフランスを追い出したものの、全国土が焦土と化しスペインは大混乱に陥ります。この本国の混乱に乗じて
植民地が次々に独立していきます。
1811年独立 ・パラグアイ ・ウルグアイ(その後ブラジルに支配されるが1828年に独立)
1816年独立 ・アルゼンチン
1818年独立 ・チリ
1819年独立 ・コロンビア
1821年独立 ・メキシコ ・エルサルバドル ・ニカラグア ・グアテマラ ・ホンジュラス ・コスタリカ
・ペルー ・ベネズエラ ・ドミニカ共和国(その後ハイチ、再びスペインに支配されるが1865年に独立)
・パナマ(その後コロンビアに支配されるが1903年に独立)
1822年独立 ・エクアドル
1825年独立 ・ボリビア
1838年独立 ・ホンジュラス
スペインの富を支えていた植民地をイッ気に失ったことで経済が破綻し、政治も混乱を極めます。王制打破の動きが活発になり、1873年には共和制政権(スペイン第一共和政)が誕生しますが、まったく安定性に欠け翌年には王政復古します。
この混乱の最中にフィリピンとキューバで独立運動が発生し、さらにアメリカが介入して、1898年に米西戦争が勃発します。この戦いでもスペインは敗北し、同年にフィリピンが独立(その後アメリカに支配されるが1946年に独立)。1902年にキューバが独立(その後アメリカに支配されるが1959年に独立)します。
もう他国との戦争どころではなく、第一次世界大戦では中立を保ちます。しかし、大戦によってインフレが拡大し貧民層はさらに困窮していきます。結果、共産党などによる労働運動や暴動、独立を目指すカタルーニャやバスクにおけるテロ活動などが相次ぎます。
1923年にはプリモ・デ・リベーラ将軍がクーデタを起こして政権を握り、テロや労働運動は一旦は収束するものの、独裁の長期化を恐れた層からの圧力により1930年に退陣。
その後は民主化を望む声が大きくなり、1931年に国王アルフォンソ13世は退位し、第二共和政が成立するというわけです。その後の展開は前回までに述べたとおりです。
結局、スペイン帝国は坂を転げ落ちるように没落し、経済破綻と政治分裂を長い間繰り返してきました。真の意味でひとつにまとまるのは、フランコ独裁政権まで待たなければなりませんでした。
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