2011年05月13日

スクウェア・エニックス合併後初の最終赤字

 ゲームソフト大手のスクウェア・エニックス・ホールディングス(HD)は12日、2011年3月期決算の業績予想を下方修正して発表した。売上高が1250億円(従来予想は1300億円)、営業利益が73億円(同80億円)、最終損益が120億円の赤字(同10億円の黒字)を見込む。最終赤字への転落は、2003年4月に旧スクウェアと旧エニックスが合併して以来初めて。

 スクウェア・エニックスHDでは、ゲーム市場の低迷が続く中で開発中のソフトラインアップの見直しを実施。不採算化しそうなソフトについては開発を停止するなど絞り込みを行った結果、先行投資した開発費などの関連損失が約45億円発生。東日本大震災の発生で被災したアミューズメント施設の復旧費用などで6億円の特別損失も計上する。 (2011年5月12日 産経新聞)

近年のスクウェア・エニックス迷走だらけで、その結果がこれです。
どうしちゃったんですかね。私が小学生の頃のスクウェアは、世の中になかったゲームを創り出し、他とは違う輝きを持った素晴らしい「ベンチャー企業」でした。しかし、今は典型的な大企業病です。

同様に感じるネットユーザーは相当数に上るらしく、ネット掲示板は大荒れの模様
以下、象徴的な書き込みを例に、同社の問題点を分析してみます。

ネットユーザーの声@
・どこでつまづいたんだ。ファミコンとかスーファミのときはものすごい面白いゲームいっぱいあったのに
・一体どうやったらあの90年代の黄金時代からここまで落ちぶれることが出来るんだと毎度思う

前身のスクウェアは、1986(昭和61)年に宮本雅史氏が横浜で設立。当初はパソコン用のアドベンチャーゲームやRPGをつくっていましたが、ファミコンにも進出。しかし、なかなかヒットに恵まれず、ファミコンからの撤退を考えていました。
そんな状況を救ったのが坂口博信氏(後に副社長)らが開発し、1987年に発売された『ファイナルファンタジー』(FF)です。このヒットで飛躍の足がかりを掴み、その後は『サガ』シリーズ、『聖剣伝説』シリーズ等のRPGを世に出し、一気に大手メーカーとなりました。

FF以前のゲームも質が高いものが多かったです。思い出深いのが『水晶の龍』(すいしょうのドラゴン、1986年)です。当時としてはクオリティの高いグラフィックが話題でした。データ容量をグラフィックに費やしたためか、プレイ中は音楽がいっさいナシ。ですが、当時はほとんど気にならず、ストーリーに引き込まれました。
doragon2.jpg  dragon1.jpg

ネットユーザーの声A
普通に遊べるゲーム作ればいいのにね

ff7-new.png1997年、大学生のときに『ファイナルファンタジー7』が発売されました。3次元で動き回るキャラクターを見たとき、たしかにゲームの歴史が変わったと実感しました。
ただ、ストーリー(プレイ時間)が長すぎます。また、プレイよりもムービーを見る時間が長いことも苦痛でした。以降、私はゲームそのものから遠くなります。忙しい社会人でも遊べるようなゲームは、めっきり減りました。

ネットユーザーの声B
FF映画からすべてがくるったな

FINAL FANTASY ― ファイナルファンタジー ― (スタンダード・エディション) [DVD] / ミン・ナ, アレック・ボールドウィン, ヴィング・レイムス (出演); 坂口博信 (監督)2001年、160億円をかけ坂口博信氏が監督した映画版『ファイナルファンタジー』が公開されます。私もものすごい期待して劇場に足を運びました。しかし、美しい画像とは対照的に、ストーリーがまったく意味不明で怒り心頭で劇場を出たことを思い出しました。
当然ながら映画の評判は最悪。赤字額は▲約60億円(世界一の赤字映画としてギネスブックにも載りました)、決算では▲130億円の特別損失を計上し、スクウェアは経営危機に陥ります。これがライバル会社エニックスとの合併の遠因となります。そして2003年、スクウェア・エニックスが誕生します。
坂口氏は責任を取って代表取締役副社長を辞任。2003年にスクウェアを退社します。スクウェア成長の立役者であると同時に、経営悪化の原因もつくった坂口氏。良くも悪くもスクウェアの顔でした。

ネットユーザーの声C
・エニックスってスクウェアと合併したメリットってあったんだろうか…?
・エニックス切り離してくれないかな

ネットユーザーの多くはスクウェアに対して厳しく、エニックスに対して好意的です。そのため、エニックスは分離すべきだという声も少なくありません。エニックスは『ドラゴンクエスト』シリーズとマンガ雑誌『ガンガン』以外、ハデな事業展開をしてこなかったため堅実なイメージがあるのかもしれません。

ネットユーザーの声D
リメイクやFF・ドラクエブランドに頼るだけで挑戦的なソフト出さなくなった

近年は、過去のヒット作のリメイクがかなり多いです。ネットユーザーからは「焼き直し商法」と攻撃されています。ハリウッド映画もリメイクが多くなった結果、輝きを失ってしまいましたが、それとまったく同じです。

ネットユーザーの声E
FF11は稼ぎ頭だったのにFF14はどうしてこうなった・・・

近年の大失敗作にオンラインRPG『ファイナルファンタジー14』(FF14)があります。
Windows版が2010年9月30日に発売されましたが、無数の致命的バグ、システム上の欠陥、基本的システムの欠如などが発覚し、ユーザーからの不満が爆発します。
現在、ユーザーがほとんど離れて収益回収の見込みがないにも関わらず、予算をかけてエラー修復を繰り返している状態。赤字が拡大するのは当然です。キラーコンテンツとなるはずのPS3版(プレイステーション3版)の発売も未定で、もう踏んだり蹴ったりの状態です。

ネットユーザーの声F
・ゲームを作りたい人がいないのにゲームでカネを儲けたい人は沢山いるよね
・ゲームに興味ないような高学歴ばっかり取ってたら面白いゲーム出来ないよなぁ
・多少勉強出来なくてもゲーム好きで四六時中ゲームしてきたような人間採用しなきゃ

ユーザーからこのように思われてしまっては、もう末期ではないでしょうか。マンガ・アニメ・ゲームのようなコンテンツ産業は、資源がない日本にとって世界に誇れる一大産業です。そして、これらを創っているクリエイターたちは、基本的に内向的な気質を持つオタクでマニアな方々です。
ところが、企業が巨大化するにつれ、表面的なキレイなイメージが先行し、オタク色が薄まっていきます。そして、優秀なクリエイターたちが居場所を失い、去っていくわけです。これが日本のコンテンツ産業が直面している課題です。

マイクロソフトのビル・ゲイツ、Appleのスティーブ・ジョブス、Googleの創業者であるセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジなど、彼らは完全にコンピュータ・オタクですよね。でも、アメリカが凄いのは、ああしたオタクを支える経営陣がめちゃくちゃプロフェッショナルということです。それでオタクの独創性と経営が絶妙にマッチして世界的な企業が生まれるわけですが、日本はまだそこまで行けていません。

スクウェア・エニックスの経営陣は、株主だけでなくユーザーの声に真摯に耳を傾けるべきではないでしょうか。

posted by すぱあく at 18:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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