現在、株式会社日立製作所は、日本最大の総合電機メーカーで、その実力は世界でもトップクラスです。しかし、「大きいことはいいことだ」という時代はすでに過ぎ、現在はむしろその大きさ故に苦しんでいるようにも見えます。日立グループの産業力を分析したいと思います。
グループ概要
現在のキャッチコピーは“Inspire the Next”
グループ約950社。全体の従業員数は約36万人(単独は約3万人)。
分離独立を早期に果たした日立電線、日立金属、日立化成工業は日立系御三家といわれています。いずれも東証一部に上場。このほか、日立建機、日立メディコ、日立ビジネスソリューション、日立ハイテクノロジーズ、日立国際電気、日立工機、日立ツール、日立キャピタル、日立物流も東証一部に上場。日立機材は東証二部に上場。
※日立造船(東証一部)は戦後の財閥解体時にグループから離脱
日立グループを紹介するCM『日立の樹』(通称『この木なんの木』)は超有名。(詳細は「日立の樹オンライン」で)
つくっているモノ
冷蔵庫から電車車両、原発まで、ほとんどなんでもつくっています
@情報・通信
ハードディスクドライブ(HDD)、サーバの製造、大型汎用機、パソコンなど
A電力
発電機、変圧器、電力設備、蒸気タービンや大型ボイラーなど。東芝、三菱重工と並んで原子炉(GEから技術導入)を製造。現在、問題になっている福島第一原子力発電所では4号機を製造
B産業
日立の原点となった電動機(モーター)は今もトップブランド。その他、医薬・化学プラント、ビル空調システムなど
C公共・都市・交通
世界で唯一、鉄道に関わるもの全て(鉄道車両・送電設備・座席予約システム・運行管理システムなど)を製造。その他、水環境システムなど
D電子装置・システム
液晶ディスプレイ、半導体、計測・分析装置、医療機器など
E建設機械
ショベル、解体・破砕機、金属リサイクル機など
F高機能材料
日立系御三家である日立化成工業、日立金属、日立電線を中心に製造
G自動車機器
日産コンツェルンの一員だったことから日産自動車の部品製造が多い
Hコンポーネント・デバイス
産業用電池、光学部品・レンズユニット、機能性材料(インク・テープ)など
I金融サービス
日立キャピタル、日立保険サービスを中心にリース事業、住宅ローン、自動車ローン、クレジットーカード事業を展開
Jその他(物流・サービスなど)
日立物流は、システム物流・国際物流の両分野で成長中
Kデジタルメディア・民生機器
携帯電話(auのみ)、「Wooo」ブランドの音響機器、映像機器、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの家電製品(白物家電)
こんなものまである
●中央研究所(東京都国分寺市)
1942年に小平浪平が創立。これまで、国産初大型計算機(1964年)、世界初の個体撮像素子(1978年)、超伝導トランジスタ(1986年)などを開発
●日立工業専修学校(茨城県日立市)
1910年の創業時、小平浪平が技術者養成のために創立した徒弟養成所が前身。卒業生のほとんどが日立グループに就職
●日立総合病院(茨城県日立市)
1938年、日立製作所の企業立病院として開院。茨城県北部地区の中核病院として地域住民にも開かれている
●柏レイソル(千葉県柏市の「日立柏サッカー場」がホーム)
1940年に創部された日立製作所本社サッカー部が前身。その他のスポーツ部は事業再編の一環でほとんど廃部に
なんでこんなにスゴイのに赤字になるのか
連結売上高はなんと8兆9685億円で、世界48位(米フォーチュン誌「2008年フォーチュン・グローバル500」より)。ところが連結純利益は▲1069億円(2010年3月期)。赤字額はこれでも良くなった方で、2009年3月期は▲7000億円でした。
赤字に陥ってしまう原因のひとつに上場子会社が多すぎという声があります。子会社の利益は、営業利益には全部取り込めても、純利益では少数株主分の利益が外部に流出してしまいます。
また、日立の上場子会社は資本面でも独立した会社が多く完全子会社ではありません。この場合は連結納税制度の対象になりません。仮に完全子会社であれば連結納税制度の対象となるため、子会社の黒字にかかる税金を、親会社の赤字分で相殺することで税負担が軽減されますが、日立グループはそこら辺がうまく行っていませんでした。そこで、09年より上場子会社5社を完全子会社化してグループを再編し、赤字幅を縮小してきましたが、それでも1000億円の赤字です。
かつては巨大グループのスケールメリットが大きかったのですが、現在のように世界全体が不況になると逆にダメージが巨大になってしまいます。それだけに、今は極めて重要な局面にあると思われます。
トリビア〜「いい日旅立ち」〜
1978年、国鉄の旅行誘致キャンペーンソングとして山口百恵さんが『いい日旅立ち』
(作詞・作曲:谷村新司)をリリースする際、日本旅行(国鉄の券売機システムを使用)と日立製作所(国鉄の車両を製造)がスポンサーになりました。タイトルに「いい日旅立ち」「いい日旅立ち」とそれぞれの会社の名前が入っています。国鉄だけでは予算が足りないので、日本旅行と日立にも協賛を得たそうです。
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2011年05月04日
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