話題になるまでの経緯が劇的でした。なにせ作者の諌山創(いさやま はじめ)氏はまだ25歳の若者で、これが連載デビュー作。絵柄もまだまだ荒削り。しかも、連載されている「別冊少年マガジン」は発行部数6万部のマイナー誌。
本来であれば、こうした状況下で話題作が生まれるのは極めて異例です。しかし、近年のマンガにはない破壊力がネットで話題となり、口コミで広がった結果、昨年から表舞台に「進撃」してきました。
簡単にストーリーを紹介します。
人間たちは、ものすごく高い壁に囲まれた領内で暮らしています。壁の外にうじゃうじゃいる巨人たちから身を守るためです。この巨人は一切の生態が謎で、とにかく不気味です。
原因はまったく不明ですが、約100年前に巨人が突如出現して人間をバリバリと食い尽くし、人間はほとんど絶滅してしまいました。
残った人類は高い壁を築いて、その中で暮らしました。幸い巨人たちは、高い知能を持っていないため壁が破られることはなく、100年間、人類は束の間の平和を過ごしていました。
ところがある日、壁よりも高い身長60メートル超の超大型巨人が出現。こやつは壁を破壊し、外にいた巨人たちがワラワラと領内に侵入してきます。
無力にバリバリと食われていく人間たち。主人公エレン・イェーガーの母親も目の前で食われてしまいます。
第1話はこんな絶望的なところから始まり、さらにその後もブレーキをかけないで崖まで突っ切るような無茶苦茶なストーリーが連続していきます。私もこの超ハイテンションなストーリーにガツンとやられてしまいました。続きが気になってしょうがないです。
で、多くの人がそうしたように、私も周囲の友人・知人に「このマンガおもしろいよ」と紹介してきました。すると、同じようにおもしろいと言う人もいましたが、
「なぜ、こんなに話題になっているのかわからない」
「そんなにおもしろいか?」という反応もありました。
あれっ? 温度差がずいぶんあるなと感じました。そこで、この温度差を少し考えてみました。
きっと『進撃の巨人』はベンチャーなんだと思います。
ベンチャー企業のようにすべてが未完成で荒削り。でも既存のブランド企業にはない破天荒さが魅力なんだと思います。「次は何をやってくれるのだろう」というワクワク感があるんですね。
だから、トヨタ車より光岡自動車、ドコモよりソフトバンク、ANAより春秋航空が好き(例がちょっと極端ですが)といった人にはピッタリかもしれません。
今のマンガ界は『ONE PIECE』が突出して売れていますが、それ以外では時代を牽引するようなマンガは乏しいですよね。小学生のときに「週刊少年ジャンプ」600万部の黄金時代(現在は279万部)を過ごしてしまった私としては、大変寂しい限りです。
それだけに『進撃の巨人』のように何もないところから話題になった作品には、大きな可能性を感じます。ぜひこれからも「進撃」していってほしいです。
最後に登場人物の紹介。本作の世界感は中世に近いのでミサイルや戦車はありません。原始的な武器で圧倒的な強さを持つ巨人たちにどうやって立ち向かうのか、その人間VS巨人のバトルも見所のひとつです。
エレン・イェーガー(左)。主人公。巨人の絶滅を目指して「調査兵団」に入団。
ミカサ・アッカーマン(右)。エレンと一緒に育った無口な少女。エレンをとても慕っており、彼を守るために「調査兵団」に入団。戦闘力はかなり高い。
アルミン・アルレルト(左)。エレンとミカサの幼馴染。気が小さかったが難局において強さを見せるようになる。
リヴァイ(右)。調査兵団の兵士長。「人類最強の戦士」と呼ばれ、一瞬で巨人2体を倒すほど強い。
★外部リンク
・作者・諫山創氏へのインタビュー記事
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