でも、そこは考え方次第ではないでしょうか。確かに大人になると考え方は硬直化し、現実的になってしまいます。しかし、経験を積んだからこそ考えも深くなり、若い頃には見えなかった世界が見えるようになります。そうやって「新しい世界を楽しむ」ことができれば、年をとることも楽しくなるのではないでしょうか。
そんな大人の視点で、エンターテインメント作品を見直してみると新しい発見があるものです。今回のテーマは、説明不要の人気作品『機動戦士ガンダム』です。
この作品で最も人気がある登場人物は、いうまでもなくシャア・アズナブルです。
しかし、大人の現実的な視点で彼を見たとき、きっと違和感を感じるでしょう。

・イケメン
・モデル並みにスレンダー
・頭脳明晰
・フェンシングなどスポーツ万能
・貴族出身(しかも父は国家元首)
・士官学校卒のエリート
・若くして艦隊の指揮官
・カリスマ性バツグンの優れた指導力
・パイロットの腕前も超一流(「赤い彗星」)
・職場でマスクやサングラスをかけていても怒られない
これを見てどう感じますか。もはや完璧超人で人間ではないでしょう。大人は、現実世界にこんな人がいないことを知っており、彼がファンタジーの産物であることを理解します。
では、大人の視点で見たとき、どんな人物に感情移入できるのでしょうか。これは土田晃之さんも『アメトーーク』の「ガンダム芸人」で語っていたことですが、
シャアの副官のドレンこそが、男の生き様をみせてくれています。

・イケメンではない
・ずんぐりむっくり
・平民出身のたたきあげ(艦隊の副官にまで出世)
・年下のシャアが上司
・シャアからは信頼されているが「貴様」呼ばわりされている
これを見てどう感じますか。「んっ!? これ俺じゃないか」と思ったお父さんも多いのでは。世のサラリーマンや公務員なら年下の上司がいてもおかしくありません。それに対しておもしろくないと感じている人も多いでしょう。だけど、それが大人の社会なのです。
見てください。平民出身でも立派に副官にまで上りつめた人がいるじゃないですか(ちなみに、彼は後に艦長にまで出世します)。
そうです。私たちが見習うべきはドレンなのであります。
年下のシャアに「貴様」よばわりされても、豪快に笑うことができる器の大きさ。だからこそシャアはドレンに全幅の信頼を置いていたのだと思います。
土田さんも「芸人として大御所でもない、若手でもない、中間の立場にいる自分を見ているようだ」と涙を流しながら彼を見ているそうです。
仮にシャアのような完璧な人物がビジネス本を出したとしても、それはあなたの役に立ちますか?
でも、ドレンが書いた本なら読みたいと思う人はきっと多いでしょう。
ぜひドレンから出世の秘密を、世の中を上手に渡っていくノウハウを教えてもらいたいものです。

●作者:ドレン
●出版社/メーカー:ジオン公国出版社
●発売日:宇宙世紀0079年
●価格:1500ダカット
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