モンゴル帝国について書かれた史書をまとめてみます。普通に購読できるのは『元朝秘史』ぐらい。
『世界征服者の歴史』 成立年:1260年 編纂者:ジュヴァイニー(1226年〜1283年)
言語:アラビア語、ペルシア語
全3巻。第1巻はチンギス・ハーンからグユクまでのモンゴル帝国の成立史。第2巻はモンゴル帝国に征服されたホラズム・シャー朝を中心とした歴史。第3巻はイスマイール・ニザール派を扱っています。
『元史』 成立年:1369年(明の洪武三年) 編纂者:宋濂・高啓など
言語:中国語
中国元王朝について書かれた歴史書(正史)。二十四史の一。本紀47、表8、志58、列伝97の計210巻からなる紀伝体。モンゴル帝国チンギス・カンの1206年から順帝トゴン・テムルの1367年まで。
明の建国後に執筆され、モンゴル色を中国から一刻も早く一掃したいという初代皇帝・洪武帝(朱元璋)の思惑のため、実質編纂期間が数ヶ月というありさまでした。結果、内容は杜撰極まりないものであり、二十四史の中でも最も評判が悪いです。
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『元朝秘史』 成立年:13世紀中もしくは14世紀前半 編纂者:不明
言語:原典はウイグル文字によるモンゴル語と推測。現存するテキストはモンゴル語を漢字で記したもの。
チンギス・カンの一代記を中核に、族祖伝承から後継者オゴデイの治世の途中まで
『集史』 成立年:1314年 編纂者:ラシードゥッディーン(イルハン朝の宰相)
言語:ペルシア語
内容:イラン・イスラム世界の視点が反映されたモンゴル帝国の発祥と発展を記しています
『モンゴル帝国史』 成立年:1835年 編纂者:アブラハム・コンスタンティン・ムラジャ・ドーソン(1779年〜1851年)
言語:フランス語
著者のドーソンはスウェーデンの外交官。ただしイスタンブール生まれのトルコ系アルメニア人、つまりモンゴル帝国(イルハン朝)の被害者の子孫。そのためか、モンゴル人の描写が際立って野蛮で残酷になっています。
『新元史』 成立年:1919年 編纂者:柯劭サ(1850〜1933)
言語:中国語
内容:従来の『元史』の不備を補うものとされ、1921年に当時の中華民国大総統・徐世昌によって正史に加えられて、従来の二十四史を「二十五史」と改めました
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2010年08月17日
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