2016年01月29日

秦の丞相・呂不韋が主人公の『奇貨居くべし』(宮城谷昌光)

宮城谷昌光(みやぎたに まさみつ)の『奇貨居くべし』を読みました。
中国の戦国時代、秦の丞相(宰相)だった呂不韋(りょ ふい、?〜紀元前235年)を主人公にした小説です。

ん、呂不韋って誰? 呂不韋は『キングダム』(原泰久、2006年〜)にも登場します。その存在感は圧倒的で、物語のキーパーソンでした。
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『キングダム』では呂不韋が悪役で、秦王・政(後の始皇帝)が主人公の善玉ですが、
『奇貨居くべし』では呂不韋が主人公なので善玉です。逆に秦王・政は従来の小説・ドラマと同様に、「苛烈・残忍」という悪役で描かれています。

本作は呂不韋の少年時代からスタートするので、『キングダム』ではすでに故人で名前しか出てこなかった白起、藺相如などが重要人物として登場します。その他、若い頃の蒙驁、麃公、廉頗、春申君なども登場。全5巻と長いのですが、『キングダム』の前日譚としてワクワクしながら読めるでしょう。ただ、『キングダム』屈指の人気キャラである王騎は登場しません。


●商人から人臣の最高位である丞相まで上り詰めた
呂不韋がなんといってもスゴイのは、身分的には最下層に近い「商人」から秦という大国の丞相にまで昇り詰めたことです。本来であればあり得ない、不可能なこと。なぜ、それができたのか。それこそがこの物語の根幹とも言えます。

彼は一世一代の大博打を打つんですね。「奇貨居くべし」(きかおくべし:これは珍しい品物だ。これを買って置くべきだ)と。一体、何が「珍しい品物」だったのでしょうか? それは読んで確かめてみてください。
そして、その賭けに勝ち、丞相として権勢を振るいました。もとから強国だった秦をさらに強くしたのも呂不韋です。

呂不韋がいなければ、政が秦王になれることは絶対にありませんでした。それはつまり、中国大陸を初めて統一する「始皇帝」の存在もなかったということです。


●文化的にも重要な人物
呂不韋は政治だけでなく、文化的に重要なものを後世に残しました。それが儒家・道家を中心とした諸学派の思想体系『呂氏春秋』です。思想だけでなく、天文暦学、音楽理論、農学理論など自然科学の分野も充実している大著です。

ちなみに、とても優れた文章や筆跡のことを「一字千金」と言いますが、これは呂氏春秋完成後に呂不韋が一般公開し、「一字でも添削ができれば千金を与える!」と公表したことが由来とされています。


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posted by すぱあく at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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