2014年11月09日

民族問題、国際問題を深く考えさせられる『天龍八部』

tianronbabu.jpg『天龍八部』(てんりゅうはちぶ、1963年)は、金庸の第十一作目。代表作のひとつですが、かなり長いので他作品をひと通り読んだ上級者向けといえます。11世紀末の宋代(北宋)が舞台。主人公は3人もいて、それぞれが別の民族です。

一人目、喬峯(きょう ほう)のちに蕭峯(しょう ほう)。武術の達人で人望もあつかったのですが、出生が契丹人(きったんじん)であるということが周囲に暴露されてしまいます。当時、契丹人が建国した遼は北宋の宿敵。出自が敵民族ということがわかった途端、居場所をなくし、追い詰められていきます。

二人目、段誉(だんよ)。雲南大理国の王子で、争いを嫌う平和主義者でしたが、図らずも数々の絶技を身につけてしまいます。

三人目、虚竹(こちく)。少林寺の僧。仏教に深く帰依していましたが、心ならずも戒律を破ってしまいます。

以上3人は、親や先祖が遺した確執に運命を翻弄されてしまうところに共通点があります。ある意味とばっちりですが、大小の差はあれ、どんな人間でもそういったところがあると思います
それぞれの話は独立していますが、それらがいつしか不思議な縁で結び合わさっていきます。その物語の重厚さは、金庸でなければ成しえなかったものでしょう。

本作も含めて、金庸作品には様々な民族の人物が登場しますが、「漢民族が一番エライ」という中華思想は出てこないんですね。そのため、普遍的でどの国の人が読んでも面白いのだと思います。民族問題・国際問題というのは、古代から現代に至るまで人間が存在する以上発生する問題なんですね。それらについて深く考えさせられる作品です。


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posted by すぱあく at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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