2012年09月05日

「果てしなき憎しみ」という哀しさ

『NARUTO』(岸本斉史、1999年〜)で、ついに黒幕のトビの素顔が明かされました。
以前からの伏線の通り、カカシの親友でかつて戦死したはずのうちはオビトでした。
obito.jpg

仮面から出てきたその素顔には、積年の憎しみと悲しみが張り付いていました。

オビトは蘇らせた死者の軍団を率いるほど圧倒的な強者ですが、心には安息など一瞬もなかったでしょう。
それは、生きているだけで拷問、まさに煉獄のような人生だったのではないでしょうか。

物語に登場する黒幕(ラスボス)には、大きく分けて2種類あると思います。
@圧倒的な能力を持ち、人間を虫のように見下すタイプ。
例: DIO様(『ジョジョの奇妙な冒険』)、大魔王バーン様(『ダイの大冒険』)
こちらはわかりやすい悪で、主人公側は完全な正義となります。勧善懲悪モノの典型ですね。

一方で、
A圧倒的な能力を持ちながら、苦しみにとらわれて自由になれないタイプ。
例: 双子座のサガ(『聖闘士星矢』)、ラオウ(『北斗の拳』)、ダース・ベイダー(『スターウォーズ』)
こちらは心に苦しみや哀しみを抱えており、ハッキリ悪とは言いにくい存在です。

オビトはどう考えてもAのタイプです。
この種のタイプのラスボスで印象的なものに、『うしおととら』(藤田和日郎、1990年〜1996年)の
白面の者がいます。白面の者は、圧倒的な能力で何百年と人間を苦しめてきました。
いかにも「絶対的な悪」っぽい存在でしたが、実は・・・
人間を見下していのではなく、つねに下から見上げて、
「まぶしい、羨ましい、憎い」と呪い続けていたのです。


その哀しき本性を最終決戦のときに、とらに見抜かれます。
ushio1.jpg










 なァ、白面、おめえは何で、
 そういつも見上げた目をしてんだ?





 なぜ、見下さねえ。
 王者ってのは、
 下っ端をそう見るもんだ。




 それが、おめえは、ずっと下から
 睨めあげてる。

 こいつの目はな、嫉妬の目だ!
 
 獣の槍を使う
 蒼月潮が
 連れてくる・・・




ushio2.jpg
 すべての陽の存在!
 それがうらやましくて、
 そして何よりも



 恐ろしいんだろォ
 白面!












 ・・・・・・・
 その・・・とおり・・・
 そのとおりだアアア!
 
 我は憎む!
 光あるものを!
 生命を、人間を!!
 人間と和合する妖を!

 何故 我は陰に、
 闇に生まれついた・・・



ushio3.jpg 国々が、まだ形の定まらぬ
 「気」であった時、

 澄んだ清浄な「気」は
 上に昇って人となり・・・

 濁った邪な「気」は
 下にたまって・・・
 
 我になった・・・

 キレイダナア・・・

 ナンデ ワレハ
 アアジャナイ・・・

 ナンデ ワレハ

 ニゴッテイル・・・!?

 

 













心の中をあばかれた白面の者は、うしおととらに討たれてついに最期を迎えます。人間に凄まじい災いをもたらした白面の者でしたが、その本性は「果てしなき憎しみ」にとらわれた哀しい存在でもありました。


最後に、哀しすぎるラスボスとして、『幽☆遊☆白書』(冨樫義博、1990年〜1994年)の仙水 忍も挙げます。
sensui.jpg


私は、この仙水編が本当に好きです。迫力あるバトル描写で単純に面白いのですが、その一方で
人間が持つドス黒さ、哀しさ、そして美しさがすべて表現されていて、
文学作品に匹敵するほどの完成度だと思います。



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マンガレビュー一覧

posted by すぱあく at 08:01| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ナルトも大河ドラマみたいになってきましたな〜。大蛇丸が戦闘力インフレで
ザコキャラ扱いされてからもうついて行けなくなったわ。

うしとらは最近全巻読み返してみたんだけど、こんなパワフルなマンガ
今全然ないよね〜。小奇麗なんばっかで読む気もおきんわ。
俺がオッサンになったからかな?
Posted by 穴鈴・ガトー少佐 at 2012年09月05日 23:16
>>>穴鈴・ガトー少佐殿

降臨ありがとうございます。
『NARUTO』に限ったことではありませんが、戦闘力インフレはバトル漫画の宿命といえますね。
私も『ドラゴンボール』で人造人間が出てきたときに、読むのを辞めてしまいました。

さて、うしとらは本当に素晴らしいマンガだと思います。
思うついでに、レビュー記事をつくっちゃいましたので、読んでくだされ。
Posted by すぱあく@管理人 at 2012年09月08日 08:07
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